暫くして、ゆっくり と 家に向かって歩き出した和だったが、
貴史が居る病院から だんだん遠ざかって行くのが何だか悲しくて、
その足取りは、自然と重くなった。
知り合いが入院している と 言うくらい だから、
貴史が病院に行くのは これきり では ないだろうし、
また何度も会える筈なのに、
少しでも貴史の近くに居たい という思いが、和を支配した。
それに、″貴史が近くの病院に居る″と考えるだけで、
このまま帰っても、
家で じっ として居る事は、出来ないかも しれない。
ふと、和は立ち止まった。
「何、やってるのかなぁ…」
自分の行動に半ば呆れながら和は呟いたが、
体は もう勝手に病院への道を、戻り始めていた。