「……今日は もう、
このまま帰ろーかな 笑」
そろそろ授業が終わるのではないか と 思われる頃、貴史が呟いた。
「…私も、帰ろっかな」
貴史は もう断らないような気が していたから、
和は自然と その言葉を口に出す事が出来た。
案の定、貴史は断らず、
誘う事も止める事も無く、
悪戯っ子のような笑みを浮かべると、言った。
「まだ あと一時間、残ってるけど?笑」
「…それは
自分もじゃん 笑」
貴史の笑顔に つられて、
和も笑いながら そう言った。
貴史が″そっか″と小さく笑うと、
ちょうど二人の間に、授業の終わりを告げるチャイムの音が流れて来た。
「あ、終わった」
本当に帰るつもり なのか、
そう言うと、足を掛けていたフェンスから降りる。
そして、和の方を振り返って、
相変わらず綺麗な顔で、笑った。
「…じゃー、そろそろ行く?」
あまりにも 自然な調子で そう言うから、
和は言われている意味を理解するのに、時間が掛かった。
「い、一緒に??」
″いいの?″と喉元まで出かかったが、
慌てて その言葉を飲み込む。
恐らく、休み時間に教室に荷物を取りに戻ってから帰ると思われるのだが、
貴史と一緒に教室に戻って、貴史と一緒に教室を出て行ったら、
ファンクラブの女の子達は どう思うのだろう、と思ったのだ。
…それを貴史は どう思う、のだろう。
迷う和を見て、
何が面白いのか、貴史は楽しそうに笑った。
「え、行かないの?笑」
先程と同じ、
自然な調子で そう言う。
「………。
……行く、けど」
消え入りそうな声で そう答えた和を見て、
貴史は ますます楽しそうに、笑った。
…まるで、″一緒に来て″と言われたら、
和が必ず付いて行ってしまう事を、知っているみたいに。

