「はぁー…。
まぢ疲れたぁ 笑」
人目を避けて走っているうちに辿り着いたのは、元の屋上で、
その上で伸びをして思い切り空気を吸い込みながら、貴史が言った。
和は そんな貴史を見て、
自分だけが知っている貴史を見る事が出来ているような、
不思議な気持ちがした。
それが すごく嬉しくて、
自然と顔が綻ぶ。
「何、どしたー?
…キモいんですけど 笑」
一人で にやにや している和を見て、可笑しそうに笑う。
″キモい″という言葉は一般的には悪口なのだが…、
貴史が言うと嫌味が無く、笑って受け入れる事が出来た。
やはり貴史と過ごす時間は穏やかで、居心地が良いのだと、
和は改めて思った。
しかし相変わらず、それを口に出す事は出来なかったから、
″この時間が永遠に続いて欲しい″と、
心の中で、痛い位に願った。
もし口に出してしまったら、
何もかもが壊れる気がして、…怖かった。
「…おーい。
だから どしたー?
何か見えんの?笑」
急に黙り込んだ和の顔を覗き込んで、
目の前で手を ひらひら振りながら、貴史が言う。
「ううん。
何でも ない!
………………。
……あの、さ……」
「んー?」
またしても和は、
貴史と ずっと喋って居たい一心で、思わず口を開いていた。
「……あの、………」
「何、なに?笑」
それに対して、今日の貴史は機嫌が良いのか
無言になる事も、和を突き放すような事も、しなかった。
もしかしたら その安心感が、
和を後押し したのかも しれない。
気付いたら和は、
いつも だったら とても言えないような事を、口走っていた。

