「…戻るの?」
「えっ?」
意外な蓮の言葉に、
吃驚して、顔を上げる。
「いや、何となく 笑
また忘れ物でも したのかな~と、思って」
…どうやら、蓮には分かって いるよう、だった。
確かに、あの状況だったら、
和が貴史の事を好きだ という気持ちまでは分からなくても、
戻ろう とする気持ちは、分かるかも…しれない。
ただ蓮の目には、貴史は和の友達か何かに映っていて、
友達を置いて来てしまった事を気に している、くらいに思っているのだろう。
「いいよ、行って来なよ!
また今度、一緒に帰ろーね♪」
「…ありがとうございます」
蓮に お礼を言って、和は再び、教室に戻った。
もし彼が まだ居たら、彼が寂しく なくなるまで、側に居よう…。
蓮には申し訳ないのだが、
蓮とは いつでも帰れても、
貴史が あんな風に弱さを見せる事は、もう ないかもしれない と、思った。
彼が側に居させてくれるので あれば、側に居たい…
そんな事を考えながら、階段を駆け上がり、教室のドアを急いで開ける。
…しかし、
そこに貴史の姿は なかった。

