和は沈んだ気持ちを抱えたまま、放課後を迎えた。
蓮が迎えに来てくれる と 言ったので、
ちらちら と 教室のドアを見ながら帰り支度を していると、
ドアの向こうに、
ちょうど こちらに向かって来る、凛の姿が見えた。
和を探しているのか、最後の授業に戻って来た貴史を探しているのか…
分からなかったが、
どちらに しても 嫌だと思い、
凛に見つかる前に、和は素早く反対側のドアから、教室を抜け出した。
抜け出してから、蓮に出て来てしまった事を言わなければ…と思ったのだが、
蓮の電話番号もアドレスも知らなかった事を思い出し、
和は慌てて蓮に直接 伝えようと、3年生の教室へ向かった。
しかし辿り着いた蓮の教室でクラスメイトに訊いてみると、
″ムニーさん、授業が終わると同時ぐらいに嬉しそうに飛び出してったよ″だそうで、
見事に すれ違いに なってしまったよう、だった。
こうなると連絡を取る術も思い付かず、
和は仕方なく蓮には明日 謝る事にして、一人で学校の外に出た。
そして家に向かって大分 歩いた頃、
和は信じられないのだが、鞄を持っていない事に、気付いた。
凛に見つからないように するのに必死で、
鞄を持って出る事を、すっかり忘れていた…らしい。
もう家に着きそう だったが、鞄を忘れたのでは どうしようもない と、
和は仕方なく再び学校へと、戻った。
下校時刻を とっくに過ぎた通学路を引き返し、教室へ戻ると、
もう生徒は誰も居なくなっていた、
…そう思ったのだが。

