暫くして あなたが閉じていた目を開けて、懐から何かを取り出した時、

それが銀色に光るナイフだと気付いた時、

私は あなたが ようやく決心してくれたのだ と、思った。


てっきり ここから飛び降りると思っていたから、それは予想外だったけれど…

でも それを口に出そう とした瞬間、

私は衝撃のあまり、言葉を失った。


…息が止まりそう だった。




あなたが、自分の胸にナイフを突き立てて、

引き抜いたナイフを屋上から投げ捨てて、いた。






「……!!…」




声が出ないまま、私は その光景を見た。


何も、出来なかった。


ただ、倒れる あなたを抱き止めるのが、精一杯だった。




―人間と同じ赤い血が、私の視界いっぱいに、広がっていった。