「また忘れ物?笑」




「うん…」




貴史と喋ると、和の心のストッパーは簡単に外れそうに なった。


彼の低くて心地いい声を ずっと聞いて居たいと思ってしまうのか、

話し易い彼の雰囲気に安心感を覚えて話したくなって しまうのか…、

よく分からなかったが、

ただ、このまま会話を終わらせたくない、と和は思った。






「宗谷くんは…どうしたの?」




「…俺も、忘れ物」






「宗谷くんも忘れ物するの??」




「何、そのイメージ 笑


する、する。


人間だもん 笑」






人形みたいな彼に″人間″なんて言われてもピンと来なかったが、

何だか その言い方が可愛らしくて、和は思わず吹き出してしまった。






「え?


もしや…人間って思ってなかった系?」




「…うん」






「″うん″って。


どんだけ正直なの 笑」






貴史を見て居るだけ だったら、

和は こんなにも、彼に惹かれる事は なかったかも…しれない。


貴史には、

内気な和が人見知りを せずに話が出来る、

不思議な力が あるかのよう、だった。




ただ貴史と居る、この空間が心地いい。


心地よかったから、

ずっと このままで居られたら いい、と無意識に願った。