帰る場所[短編]

だけど、大学の同級生が髪を黒に戻し、パリッとのりの利いたスーツを着て、就職活動を始めても、美羽は相変わらず、アルバイトと旅行に明け暮れていた。


「卒業後のこと、少しは考えたら?」と言っても、美羽は、曖昧に微笑むだけだった。

今思えば、この頃の彼女は、こんな生活を始めた頃のキラキラ輝く表情はしていなかった気がする。

笑っていても、どこか寂しげで…。



でも、俺も自分が内定を取るのに必死で、そんな美羽の変化を気にかけている余裕はなかったんだ。

ただの言い訳でしかないのかも知れないけれど。





俺がやっと卒業間近になって、内定が取れたとき、美羽は自分のことのように喜んでくれた。

おいしい美羽の手料理を食べて、普段は買わないような高いワインを買って、二人で俺のアパートでささやかなお祝いをした。

久しぶりに体を重ねて、肩を寄せ合って眠って、これ以上ないほど幸せだった。


本当にありきたりだけど、美羽の寝顔を見ながら、俺はこうしてずっと美羽と一緒にいられると思ってたんだ。

だけど、俺のこんな願いは、次の朝には見事に打ち砕かれてしまった。