【完】運命は罠と共に



「退院の話はもうあがってるよ。詳細決まってないから、リハビリにはまだ話来てないんだね」



「確かにそろそろ通院でも大丈夫そうだし、退院したらアプローチしてみたら?」



……退院。

そうしたら、みんな看護師の事なんか忘れていくんだ。



「病棟にいたらね、退院した患者さんは完全に他人になっちゃうんだよね。そして私たちって、忘れられていくんだよね」



自分で言ってさみしくなった。



主治看といっても、日によっては他の看護師が対応するし一対一で話す機会って実際すごく少ない。



だから患者が特定の看護師に会いにきたりすることもほとんど無い。



けれど亜美のいるリハビリは違う。


外来通院する人も居るし、退院後も患者と関わっていくことが多い。


それに1人の患者に一対一で関わる時間が長い。


だからなのか治療が終了しても、患者が会いにきてくれることがある。


いつも羨ましく思ってた。



「何言ってるの奈々。だからいいんだよ。完全に患者と看護師の関係が切れるってことだよ。1人の女としてアプローチしていいってことだよ」






そっか。


そんな考え方もあるんだね。