翌朝起きても、やっぱり何も変わっていなかった。
泣き疲れていつの間にか眠ってしまったようだ。
湿っぽい枕と、ぐちゃぐちゃに乱れた掛布団。
私があの時抵抗して足をばたつかせた跡だ。

どちらもあの出来事が事実であることを再認識させるようなものだった。







ふらつく足取りで下に降りると、いつもと変わらないお母さんの「おはよう」という声掛けがあった。
お父さんはもう家を出たらしい。
逃げたのか、本当に仕事があったのか。
わからないけど、顔を合わせずに済んで一安心だ。

でも……

どうしよう。
お母さんに打ち明けてみようか。


ううん、それはできない。



あんなことされたなんて知られたくないし、何より……

お母さんはあの人を信じているんだ。
信じているから再婚を決めたんだ。
それに、あの人のことを本当に大好きなのは傍で見てる私がいちばんよくわかってる。


私もお母さんが大好きだから。
悲しませたくない。

言わない。きっと、誰にも。

大丈夫。私は、ひとりでも大丈夫だよね……