「向坂くんだっけ?」 陽菜があたしの隣りにちょこんと座る。 陽菜はひとつひとつの動作がかわいい。 「あたし思うんだ。過去は忘れるものだって。もちろん記憶にとどめておくべきものもあるけどね。」 あたしの手を握る。 「杏奈の初恋なんでしよ?」 「それは違うよ………」 ひろくんは初恋とかそんな存在じゃないよ。なんていうかね……上手く言葉では言えないけど…… 「違わないよ。杏奈最近そればっか。」 陽菜の言うことも正しいよ。でも、あたしはそれを認められない。