僕はキミの名を知らない

「すいません。思いだそうとすると頭が痛くなるんで、記憶が復活するようなさヒントをください」

「仕方ないな」

あれ?彼女の態度が少し軟化してるぞ“可愛い”が効いたのか?そんな単純なホメ言葉で僕の記憶が戻るなら、いくらでも浴びせてやるが。

「ほうれん草はなに色だ?」

軟化し過ぎだろ!記憶喪失といえども、ほうれん草の色ぐらい緑色だって分かる。

あっ!そうだった…。

僕のバイクは緑色。それに乗ってる途中、事故ったんだ!そして救急車に運ばれ、この病院に入院した。

「僕はバイクで事故って入院したんだね」

「うん」

「キミはそのバイクに乗ってはいなかったんだよね」

「うん。私はいつも一緒に乗りたいなって思ってたけど、あなたが危ないからダメって言ってたし」

「ごめん。こんなことを聞くのは最低だと思うんだけど、でも僕は記憶喪失だから許してな」

「うん」

「キミは僕の彼女なの?」

「…教えない!」

なんでだー!今までの流れからしてキミは僕の彼女だよね。どうして“うん”と言ってくれない?例の言葉をもう一度使ってみるか。