「一目ぼれした?
 相模会長に」

呆れたように寛人が言う。

あの後入学式の挨拶で
あの人の名前は
『相模千尋(ちひろ)』先輩だとわかった。

「何よ、文句あるわけ?」
 
じろりとにらんでやると

「別に・・・」
 
複雑そうな顔で黙ってしまう。

「でも珍しいね。
 中学ではそういうの
 見向きもしなかったのに」
 
莉沙が微笑む。

確かにそれなりに
告られたりはあったけど。
興味を持てなかったし、
女の子の恋バナにも
積極的に参加しなかった。

「自分でも不思議だけど
 こんな気持ちは初めて」

相模先輩のこともっと知りたい。

相模先輩のことで
頭がいっぱいの私は 
何か言おうとして
諦めた寛人のことも、
その寛人を見つめる
莉沙の表情にも気づかなかった。