「ひよりちゃんは
 相模先輩のこと
 本気で好きなの?」

その日は
委員会で寛人がいなくて
莉沙と2人でお昼を食べていた。

「へ?
 うーん。
 先輩のことは
 優しいし、かっこいいし
 好きだな~って思うよ」

「告白しないの?」

「こ、告白?
 だって無理だよ。王子様だよ?」

確かに憧れの存在ではある。
知り合いにはなれた今だって
雲の上の人だ。
1年の私が仲良くしてもらってるからって
やっかむ人がいるくらい
人気者だし。

「じゃあ士狼さんは?」

「っごほっ・・・
 え、士狼?」

莉沙の突然の質問にふきだしてしまう。
いきなり何を言い出すの?

「笠原君が士狼さんのこと悪く言うと
 ひよりちゃんかばうし。
 状況だけ見れば
ひよりちゃんの性格なら
 もっと自分がつっかかってもいいのに」

そ、そうかな。
でも確かに
最初はケンカ腰だったよね。

「相模先輩にも
 仲良くなってるのに
 そこまで
 積極的にいくわけじゃないし」

「だって、
 こういうの初めてだから
 よくわからないんだって!」

決して士狼の方が
気になってるからじゃない。
・・・と思う。

「ほんとに?」

莉沙がじっと見つめてくる。

おっとりしてるように見えて
莉沙は肝心なところでの逃げは許してくれない。

「・・・わからないの。
 自分でもはっきりしない。
 士狼のこと気になってるけど、
 それが好きって感情かも
 よくわからない」

自分にも良くわからないものを
人に説明できるわけない。

どんどん頭がぐるぐるしてくる。

「・・・笠原君は」

「え?」

一人で混乱していた私は
莉沙の言葉を聞き逃す。

「ううん。
 なんでもない」

このときはいっぱいいっぱいで
莉沙が何を考えていたかなんて
気づきもしなかった。