先に目をそらしたのは
士狼だった。

「さあ、
 食べ終わったならもう寝ろ」

そう言うと
食べ終わった器を持って立ち上がる。

「あ、あのさっ」

なんとなく名残惜しくて
思わず声をかける。

「何だ?」

・・・どうしたんだろう、私。

「ううん。
 ありがとう」

お礼を言うので精一杯だった。

「・・・お休み」

こんなに混乱してるのに、
まだ自分の中ではっきりとしない。

少しずつ気になる存在になっていくのに
それでも引いている自分がいる。

それはやっぱりあのことがひっかかってるからなのか。

『士狼様には好きな人がいるんだからなっ』

更紗という人。
士狼にとってどういう存在なんだろう。