声がした方を向くと
そこにはかなり派手な顔立ちのイケメンが仁王立ちしていた。
 
真っ黒い髪に瞳、
全身黒のコーディネイト。
肌だけ透き通るように白い。

芸能人と言われたら
納得してしまいそうだ。
 
「おい、
佐藤ひよりかって聞いてる」
 
ぼーっとして返事をしない
私に業を煮やしたのか
不機嫌さを隠そうともせずに言葉を繰り返した。

「お、お前こそ誰だよ?」
 
同じように固まっていたけど
先に呪縛の解けた
寛人が私を背にかばう。

だがそれがまた
イケメンの機嫌を損ねたようだ。

「ちっ、いいから来い」
 
そう言うと寛人を無視して私の腕をとる。

「な、なんなのよ?」
 
私が構えると
 
「ここじゃ人が多い」
 
と忌々しそうにはき捨てると
そのまま私を引きずっていこうとする。

「いやー!」
 
体が勝手に動いていた。

「うわっ!」

「ひ、ひより!」
 
気づくと私はイケメンを
投げ飛ばしていたらしい。

周囲がざわざわしだす。

「今のうちに逃げるぞ!」
 
寛人に腕をとられ走り出す。
とにかく全力で、逃げた。