「佐藤さんは
 てっきりだんな様が
 お嫌いなのだと思っていました」

「確かに好きか嫌いか聞かれると
 苦手ですけど。
 でもいつも顔をあわせると
 憎まれ口叩く人が
 人の顔を見てもスルーなんて
 気になるじゃないですか」

そういうと
宗像さんはくすり、と笑う。
わ、笑った顔初めて見た・・・。

「あの方は
 あまり自分の感情を表現するのが
 上手ではないのです」

そ、そうなのかな。
自分がやりたいように振舞ってる気がするけど。

「・・・そうですね。
 最近少し塞ぎ込んでいらっしゃるようです」

ずっと仕えている宗像さんから見ても
やっぱりおかしいみたい。

「佐藤さん
 お菓子作りは得意ですか?」

「へ?
 それなりにはできますけど」

そう答えると宗像さんは頷く。

「では、今日はもう他の仕事はいいので
 何かお菓子を作ってもらえませんか?」

お菓子?

「だんな様はああ見えて
 甘いものがお好きなのですが、
 私はあまり得意ではないので」

そうなんだ。
意外かも。

「お願いします」


「わかりました」

例え食べさせる相手が士狼でも
お菓子作りは趣味の1つだ。
断る理由もない。