「あ、あの・・・」

さっさっと歩いていく
宗像さんに声をかけると
立ち止まり振り返る。

「佐藤さん、
 と呼ばせていただきます」

落ち着いた声でそう言うと
再び前を歩き出した。

「は、はい」

慌ててそれに続く。
  
敷地は広く、
沢山の部屋の前を通り過ぎる。

1階に一番奥の部屋にたどり着くと宗像さんは足を止めた。

「こちらが使っていただく
 部屋です」

部屋に通される。
 
こじんまりとはしているが、ベットに机、洋箪笥や鏡台もある。

「私は隣のお部屋を
 いただいております。
 旦那様は明日からと
 仰せでしたので
 明日から館の間取りや
 仕事の内容をお教えします」
  
抑揚のない声で告げられる。

「夕食は何もなければ
 午後6時半と決まっています。
 時間になったら
 お声をおかけします。
 それまでおくつろぎください」
  
それだけ言うと宗像さんは
部屋を出ていこうとする。

「あ、あの
 ご迷惑をおかけしますが、
 よろしくお願いします」

頭を下げると、
宗像さんは私をじっと見て

「旦那様が心地よく
 お過ごしになれるよう
 心をくだくことが最優先です。
 それをお忘れなきよう」
  
そう言うと
部屋から出て行った。