「ここが今日からお前の家だ」
 
思わず息をのんでしまう。
そこは思っていた以上に
大きな家だった。


何かあったときのために
元の家はそのままにして
荷物は最小限だけ詰めた。

「悪魔ってお金持ちなの?」

思わず言うと、

「まあ、それなりに」

と士狼は言う。

士狼に促され玄関の前に立つ。

すると、

「お帰りなさいませ、
 旦那様」

扉が開き、
見事な銀髪の老人が、見事な角度でお辞儀をしていた。
テレビとかで見る執事そのものだ。

「宗像(むなかた)。
 話していた娘だ。
 今日からここに住まわせる。
 メイドとしてしっかり
 仕込んでやってくれ」

宗像、と呼ばれた老人は
頭を上げちらりと私を見る。

一見穏やかな顔をしているが、
目の奥は笑っていない。
 
「さ、佐藤ひよりですっ」

頭を下げると、

「宗像と申します」

丁寧に挨拶をされる。
 
「仕事は明日からだ。
 まず部屋へ案内してやれ」
  
「かしこまりました。
 では、こちらへ」
 
促されるままついていく。