次の日……



HR前『2―A』の教室は、朝の喧騒に包まれていた。



そんな中、教室に現れた和哉は席につくと……



「コレ……」



と、隣の霞にノートを返した。




「あっ……もういいの? 私、字がヘタだから見づらかったでしょ」



ノートを受け取った霞は、そう言いながら、それをパラパラと開く。



「!」



昨日の授業の部分に書かれた文字に気づく。




『ノートどうも。今後は妙な気をつかわないでくれ』




その和哉のコメントに、霞は複雑そうな顔をした。





チャイムがなり担任の臼田が、ボサボサの頭をかきながら入ってきた。



身なりはどこかだらしなく無精髭を生やしている。



キチンとすれば、それなりに男前なのに……女子達の多くが、そのように思っているようだ。





「えー……急なことだが、このクラスに転入生が入るらしい」



臼田が他人事のように言うと、教室はざわめきたった。





「先生、いつから来るの?」



男子の一人が、そう聞くと……




「今日からだ」



臼田はサラリとそう言った。




「おーい、入ってこい」





スッ……




しっかりとした足取り……



流れるサラッとしたセミロングの髪……



その少女は、皆の前で正面に向き直ると……




「來中 巡(キタナカ メグル)です。よろしくお願いします」



ハッキリとした口調で名乗ると丁寧なお辞儀をした。





「オ……オイ! いんじゃね」



「ああ、かなり……イヤ、スゲーいい」



男子の多くが巡の登場に息をのんだ。




そんな中、稀咲は露骨に顔を歪めてポツリと言う。



「なーんか気に入らない女……」





その一方で……



一連の流れを我関せずと、窓の外を眺めていた和哉。



(イヤな名前だ……そんな名前の奴、他にもいるんだな)



漠然とそんなことを考えて、何気に送った視線が硬直する……。




(メグル……巡! そんな訳……ないだろ!?)




驚く和哉……




すると、巡も和哉を見る……





そして、それまでの笑顔は消え……





軽蔑したように、和哉を見据えていた……。