放課後……



和哉は淡々と帰宅についていた。



すると後方より、バタバタと駆け寄る足音がある。



その足音を聞き、和哉は小さくため息をついた。




「おーい! カズヤ! 一人で帰ってんじゃねぇよ」



三郷 小太郎(ミサト コタロウ)は和哉に追いつくと、その頭をパンと叩いた。




「ってえなぁ……お前を待つ必要はねーだろ?」




「冷たいこと言うなよ。1年からの親しい奴なんて、今のクラスじゃカズヤだけなんだからさ」



小太郎は、人懐っこい笑顔で悪びれることなく、そう言った。




「別に……お前のこと親しいなんて思ってねーけど……」




「なんだよ! 照れやがって」



小太郎は和哉の首に腕を回して、ヘッドロックすると、その頭を小突いた。




「イテテ……やめろよ」



和哉は、その腕をほどきながら……



(……コイツといると調子が狂うよ)



そんな風に思っていた。




和哉は、もともとが人見知りである。そして、ある出来事をきっかけとし、その性質に拍車がかかることとなっていた……。



最初は同世代の女子を意識的に避けることに始まり……



やがてエスカレートして、人付き合い自体を面倒と考えるようになっていった。



だから、高校に入学して一年……和哉には彼女はもちろん、友人と呼べる者さえ出来てはいない。




しかし……



この三郷小太郎だけは例外と言えるのだろう。



つれない態度の和哉に、なにかと突っかかっては一人、愉しそうにしている……。





「お前……俺といてもつまんねーだろ?」



和哉が怪訝そうな顔で聞くと……



「エッ? なんで? 面白いじゃん」




(ホント……変わり者だよコイツは)



屈託なく答える小太郎の顔を、和哉は改めてまじまじと眺める。それは、彼にとって珍しい行動であった。




すると……何かに気づいた小太郎が和哉に向かい……





「カズヤ! 危なっ――」




ガン……!




小太郎の忠告も虚しく、和哉は電柱に頭をぶつけた。




「アハハハ! 大丈夫か? フハハ……」





「いってー!」




こめかみの辺りを押さえて痛がる和哉に、小太郎が言う。




「ハハ……カズヤって普段クール気どってるクセに天然だからなー。そこが、かなり面白いぜ」






「別に……気どってるつもりなんか」



和哉は、少しばつが悪そうな顔をした。