宴が進むと、中学時代の写真がスライド上映された。
それらの写真は卒業アルバムに使われたものだった。
幼さの残る同級生たちが我先にとピースをしている写真、運動会や部活動の写真…
写真が変わるたびに歓声が沸き起こった。
そして、最後は校門の前で撮ったクラス全員の集合写真。
桃子は少女だった自分を探した。
列の中程で拗ねたような顔で写っている。
桃子は苦笑した。
次は潤を探す。
スポーツ刈りの潤は最前列の一番端でしゃがみ、拳の親指を上に立てるポーズをしていた。
その上の少女に桃子の目は釘付けになった。
千香だった。
長いストレートの髪が風にそよぎ、笑顔を見せていた。
まだ幼いが美貌の持ち主だった千香。
誰もが千香に目を止めたはずだ。
転落して死んだ千香。
自殺だったかもしれない千香。
幽霊の噂があった千香。
皆の思うことは同じなのに、この場所で千香のことを話題にするものはいなかった。
中野千香という女の子は最初から存在しなかったように。
二次会はカラオケという事だった。
桃子は昨夜のことでそんな気分ではないし、実家に愛菜を預けているから帰ろうと思った。
潤とは始めに喋っただけで、期待していたようにはいかなかった。
人気者の彼は他のクラスメイトや先生との再会で忙しかったからだ。
「永瀬さんはカラオケ行くの?」
会場の出入り口で幹事の同級生に聞かれた。
笑顔で桃子は答えた。
「ごめんね。私、帰る。」
「だめだよ!永瀬は行かなきゃダメ!」
背後から潤の大きな声がした。
桃子は振り向いた。
「俺が無事に米子から帰ってきたんだから、カラオケで祝えよ。」
潤は少し酔っているようだった。
二次会のカラオケルームはファッションビルの4Fにあった。
桃子には初めての店だ。
同じフロアにあるスパには、結婚前に一度きたことがあった。
カラオケのパーティルーム集まったのは30人ほどだった。
潤は桃子の隣に座った。
それは始めだけで、カラオケが始まると、また潤は他の同窓生たちのところに行ってしまった。
潤が来なきゃダメだと言った癖に…。
桃子は呟いた。
集まった同窓生たちは、卒業後も親交の続いた者同士が既にグループになっていて、桃子は孤独気味だった。
幹事がいくつかのタンバリンやマスカラを配り、桃子はタンバリンを受け取った。
同窓生たちの歌うカラオケに合わせて、タンバリンを打つ。
潤は、同窓生たちの間を回ってビールをつぎ、カラオケのリモコンの操作がわからない者に代わって曲を送信したりしていた。
いつのまにか司会みたいになっていた。
その間に自分も飲み、喋り、笑う。
とにかく潤は忙しい。
潤はジョンレノンの「スタンド・バイ・ミー」を歌った。
英語の発音もよく歌も上手い。
昔からなにをやらせても器用にこなす男だな…と桃子はぼんやり思った。
「次は永瀬桃子さんね。曲選んででおいて。」
誰かが言った。
それらの写真は卒業アルバムに使われたものだった。
幼さの残る同級生たちが我先にとピースをしている写真、運動会や部活動の写真…
写真が変わるたびに歓声が沸き起こった。
そして、最後は校門の前で撮ったクラス全員の集合写真。
桃子は少女だった自分を探した。
列の中程で拗ねたような顔で写っている。
桃子は苦笑した。
次は潤を探す。
スポーツ刈りの潤は最前列の一番端でしゃがみ、拳の親指を上に立てるポーズをしていた。
その上の少女に桃子の目は釘付けになった。
千香だった。
長いストレートの髪が風にそよぎ、笑顔を見せていた。
まだ幼いが美貌の持ち主だった千香。
誰もが千香に目を止めたはずだ。
転落して死んだ千香。
自殺だったかもしれない千香。
幽霊の噂があった千香。
皆の思うことは同じなのに、この場所で千香のことを話題にするものはいなかった。
中野千香という女の子は最初から存在しなかったように。
二次会はカラオケという事だった。
桃子は昨夜のことでそんな気分ではないし、実家に愛菜を預けているから帰ろうと思った。
潤とは始めに喋っただけで、期待していたようにはいかなかった。
人気者の彼は他のクラスメイトや先生との再会で忙しかったからだ。
「永瀬さんはカラオケ行くの?」
会場の出入り口で幹事の同級生に聞かれた。
笑顔で桃子は答えた。
「ごめんね。私、帰る。」
「だめだよ!永瀬は行かなきゃダメ!」
背後から潤の大きな声がした。
桃子は振り向いた。
「俺が無事に米子から帰ってきたんだから、カラオケで祝えよ。」
潤は少し酔っているようだった。
二次会のカラオケルームはファッションビルの4Fにあった。
桃子には初めての店だ。
同じフロアにあるスパには、結婚前に一度きたことがあった。
カラオケのパーティルーム集まったのは30人ほどだった。
潤は桃子の隣に座った。
それは始めだけで、カラオケが始まると、また潤は他の同窓生たちのところに行ってしまった。
潤が来なきゃダメだと言った癖に…。
桃子は呟いた。
集まった同窓生たちは、卒業後も親交の続いた者同士が既にグループになっていて、桃子は孤独気味だった。
幹事がいくつかのタンバリンやマスカラを配り、桃子はタンバリンを受け取った。
同窓生たちの歌うカラオケに合わせて、タンバリンを打つ。
潤は、同窓生たちの間を回ってビールをつぎ、カラオケのリモコンの操作がわからない者に代わって曲を送信したりしていた。
いつのまにか司会みたいになっていた。
その間に自分も飲み、喋り、笑う。
とにかく潤は忙しい。
潤はジョンレノンの「スタンド・バイ・ミー」を歌った。
英語の発音もよく歌も上手い。
昔からなにをやらせても器用にこなす男だな…と桃子はぼんやり思った。
「次は永瀬桃子さんね。曲選んででおいて。」
誰かが言った。