俺の心の中なんて読まない梨夏は、ニコニコして俺に話し掛けてくる。
「だってさ吉野、意地悪ばっかするし。言葉用意しとかなきゃでしょ?」
「意地悪って。んなことしてる気はないけど?」
「どこが!?いっつも私が慌てることばっかりするじゃん!今日だってそう!本当にビックリしたんだからね!」
「それは悪かったって。梨夏を驚かせたかったんだよ。けろっと笑ってくれると思ったら、怒るし」
「怒るに決まってる!」
ぶー、と梨夏が口を尖らせる。
キスしたくなったけど、我慢した。
まずはこの話を片付けよう。
「………何?俺が戻ってきたの、嬉しくなかった?」
「!………そ、そんなんじゃ…ないけど…」
「けど?」
「………………私だけ知らなかったの、悔しかったんだもん。吉野の一番近くにいるのは私って思ってたし」
「―――…」
梨夏は頬をピンクに染めて、ぷぅと膨らませる。
…………………おい、勘弁しろって。
無自覚(であろう)梨夏の誘うような表情と言葉に、俺は必死に耐える。
このままだと、ヤバすぎる。
…さっさと話も仕事も終わらせよう。
そう決心する。

