「…まぁ、いいよ。フルネームなんて」

「へ?」

「“吉野”、って呼んでみ?」

「はい?」

「いいから。」

「吉野…?」

「うん」


満足そうな吉野の表情に、私は首を傾げる。
…吉野の手で、頭押さえられてるから、ほとんど動かなかったけど。


名字呼び捨てでいいの?
てか、むしろ、フルネーム教えてほしい…。


「………吉野。フルネーム教えて?」

「――――…」


吉野は笑うだけで、なかなか答えてくれない。


「ね…」

「こばやし、だよ」


…こばやし?
吉野小林?
………名字みたいな名前してるんだ?


「こばやし…」

「結婚したら“こばやし梨夏”だね。悪くない」

「へ?」