大嫌いなアイツ

 

「オレたち、客だぜ?言うこと、聞けねぇのか?」

「―――っ、申し訳ありません」


私がなかなか頷かないことに、その男もイラついていた。


―――引かない。
どれだけ謝って断っても、しつこく誘われる。
仕舞いには、自分達は客、だと上から物を言ってくるとか。
たちが悪すぎる。


「なぁ」

「!!」


私はビクリと身体を震わせた。
…男の客に手首を掴まれてしまったんだ。
連れの男はニヤニヤと楽しそうに笑って、経緯を見ている。


状況に気づいた他のお客さんからの視線が、どんどん集まるのを感じる。
お客さんたちの心配そうな表情が私を焦らせる。


ヤバい。早く収めないと…!


「お客さま、本当に申し訳ありませんが…」


手首を捻って逃れようとするけど、男の力は強くてそれは叶わない。
サーっと血の気が引くのを感じた。
私一人じゃ丸く収められないかもしれない。


そう思った時だった。







「…申し訳ありませんが、お客様?…お引き取り、いただけませんか?」