大嫌いなアイツ

 

吉野の不安そうな表情と声に、私は焦った。
早く伝えなきゃ…!


「ちが…っ!」


私はブンブンと首を横に振る。


「…うん」


吉野が優しい顔で頷いた。
その表情を見ただけで、私は一気に落ち着きを取り戻す。


「―――…確かに、嫌い、だった…」

「…うん」

「……………でもね、今は嫌いじゃない」

「―――」

「たぶん…」

「―――」

「私、吉野くんのこと、好き…んっ!」


待てない、と言うかのように、吉野の唇が降ってきた。
この前の触れるだけのキスとは違う。
吉野の気持ちが伝わってくるキスだと思った。