大嫌いなアイツ

 

吉野の照れたような、拗ねたような表情に、私の心臓がドキリと大きく跳ねた。
し、しかも、今私の考えてること、読んだよね…?


「…あと。抑えるのに、必死で。バイトのやつらの前だし」

「………抑える、って…何を」

「ん?聞きたい?」


ゆっくりと吉野の手が私の頬に触れた。
親指で唇をなぞる。


「!よっ、吉野く…っ」


吉野の指が動くたびに、ぞくっとする―――…
それと同時に顔がどんどん熱くなるんだけど…。


「…………ヤバい。」

「……へ?」

「そんな顔、すんな。止まらなくなる」

「―――ちょ…!」


近付いてくる吉野に、私はぎゅっと目を閉じた。


でも、何も起こらなかった。


「……?」


そうっと目を開けると、吉野が真剣な表情で私を見ていた。


「吉野…」

「教えて。…岡部さんは俺のこと、どう思ってる?」

「―――!」


答えは一つ。
だけど、そんなに簡単に言えない。
言いよどんでいると、吉野の表情が不安そうなものに変わった。


「やっぱり…嫌い、か?」