吉野の今の態度で全部わかった気がした。
キスされたからって、『もしかしたら吉野は私のことが好きなのかも』なんて、少しでも考えてしまった私がバカなんだ。
「……岡部さん?何か言いたいことあるんじゃないの?ないなら、俺行くけど」
少しイラついた声。
最後までイライラさせちゃってる。
悲しくなった。
「―――――…何でも、ない」
必死に言葉を絞り出した。
胸が苦しくて、締め付けられて、息が思うようにできない。
「―――そう。じゃ、行くな」
「う、ん」
「………元気で。」
「―――…」
私は何も言えないまま、吉野の去っていく姿を見てた。
…涙がポツリと一粒落ちた。
吉野の表情を振り払うように、思い出さないように、私は無駄に元気に、必死に働いた。
ちょうど今日は忙しくて、他のことを考えてる余裕もなくて。
忙しさに身を任せてる間に、気付けば、吉野の姿は厨房から消えていた…。

