吉野の目線が私を捕らえる。
と同時に、固まる私の身体。


「…岡部さん。何してんの?」

「いやっ、別に…!」


ブブブン、と右手を左右に振る。
盗み聞きしてた、なんて言えません!


「そ。…じゃあ、元気でね」

「!」


吉野は笑いもせず、私の横を通りすぎていく。


え、待ってよ…
このまま、終わり…?


私は咄嗟に声を出してしまった。


「待っ…吉野くん…っ」

「ん?何?」


吉野はめんどくさそうに、振り向く。
その表情に、少しだけ持っていた期待がしぼんでいくのを感じた。


吉野は、私のことなんて何とも思ってない。