「岡部さんってバスだっけ?」

「え?あ、うん。そうだけど…」

「そ。じゃ行こ」

「へっ?」


行く、って??
どこに!


私がぱちくりと瞬きをしてる間に、吉野はスタスタと歩いていく。
私は慌てて吉野の後ろ姿を追いかける。


「ね、ねえ、吉野くん」

「ん?なに」

「行くって…吉野くんもバスなの?」

「…いや。電車だけど」

「電車だったら、逆方向だよ?なんで…」


ピタッと吉野の足が止まった。
でも、目線はこっちを向かないまま。


「………散歩。」

「は?」

「―――…はぁ。いいから、行くよ」

「え………、うん…」


再び歩き出す吉野を私は追う。


どういうことだろう…。
散歩って…こんな遅くにしないでしょ…?


「…」


少し前を歩く吉野の後ろ姿を見つめる。
細いと思ってたけど…広い背中だということに初めて気付いた。


もしかして…送ってくれてる、とか?
………いや、そんなわけないよね…
あんなにめんどくさそうな顔してたんだもん。


……吉野が考えてることがよくわかんない…。