「―――――おい!」
モップを掃除用具入れから出していると、後ろから腕を引っ張られた。
振り返ると、厨房にいるはずの吉野がいた。
「―――吉野、くん!?」
「おまえ、さっきの熱湯だろ!?火傷してるんじゃねぇの!?早く冷やせ!ほら!」
イライラとしているような吉野の表情と、腕を引かれる強さに少し怯んだけど、今は負けてられない。
私は吉野の手を振りほどいた。
「大丈夫だって!先にお客さんのところ片付けないと。床濡れたままだと滑って危ないから」
――――ジンジンする。
「そんなの、他のヤツに任せればいい!」
――――痛い。
「無理だって!今みんな忙しいんだから―――…っ!?」
――――気付いた時には、身体がフワッと宙に浮いていた。

