大嫌いなアイツ

 

***


――――この時期は何故か、バイト先でのトラブルが多かった気がする。
この日もそう。





――――バシャン!


「―――っ!」


お客さんがひっくり返したポットに入っていた熱湯が、運悪く私の足元にかかった。


「ごめんなさい!大丈夫ですか!?」


お客さんが慌てて謝る声が聞こえるけど、神経は足元に集中してしまう。


熱い―――!
…でも、お客さんに心配かけちゃダメだ!


私は必死に笑顔を浮かべた。


「大丈夫ですよ。お客様こそ、怪我されませんでしたか?すぐに片付けますから、お待ちくださいね」

「本当にごめんなさい―――!」


申し訳なさそうな表情のお客さんに、大丈夫ですよ、と言うように笑顔で頷いて私は裏に行く。
今はお客さんがたくさんいて、バイトのみんなもてんてこまいだ。
私がちゃんと対応しなきゃいけない。