大嫌いなアイツ

 


「―――橋元さんっ!あのかわいいイチゴ、橋元さんが作ったんですよね!?お客さまも喜んでましたよ~」


お客さんの波が途切れた頃、私は厨房の中に話しかけた。
私の声に、料理の下準備をしていた橋元さんが顔を上げた。


「え?あー、あれ、僕じゃないよ」

「へ?」

「僕、あんな細かい作業苦手だし。って、料理人の言うセリフじゃないけど」


橋元さんはハハハッと苦笑いをする。


橋元さんじゃない?
だったら…


「え、じゃあ誰が…?」

「こいつだよ。なぁ、吉野」


橋元さんは背後で洗いものをしていた吉野を指差す。
吉野は後ろを向いたまま、こっちを見ようとしない。


――――う、嘘っ!
吉野がそんな粋なことするなんて…
信じらんない…。


「吉野?スルーすんなよ」

「………別に、時間あったから作っただけです。」

「あっ、おまえ照れてんだろ?かわいいヤツ!」


そう言って、橋元さんは吉野の肩を揺さぶる。
その拍子に吉野の顔が見えた。






――――ドキッ!