君は俺の嫁

当時の比呂には少し特殊な能力があって、時々未来を予知するヴィジョンが見えた。

それは本当に突然現れて、クラスで飼っていたハムスターが逃げてしまうことや、自分のテストの点数、時にはその日のおやつが何か、などと、ほとんど意味のないようなことばかりを比呂に知らせていた。

コントロールできるものでもないので、何かに役立てることもできない。
そのため、比呂はこの能力のことを深く考えていなかった。


だがある時、比呂の転校が決まる。

父親の転勤で、遠くに引っ越すことになったのだ。


転校当日、クラスメイトがお別れ会を開いてくれた。
その最後に、由乃が皆を代表してお別れの手紙を読んだ。


これでもう由乃と会えなくなる。
寂しいが、比呂にはどうすることもできない。
もっと勇気を出して彼女に話しかけておくんだったな、と、今更後悔した。


手紙を読み終えた由乃は、「元気でね」と、右手を差し出した。
お別れの握手だ。

女の子の手を握ることに戸惑ったが、これで最後だから、と比呂はおずおずと右手を伸ばした。

そして、由乃の手を握った瞬間。

ビリリっ！と、比呂の体に電流が走った。

そして、過去最大級のヴィジョンが訪れる。