異様な身の起こし方だった。

背を仰け反らしたまま、ゆっくりと上体を起こす。

起き上がるというよりは、死体が何かに引っ張り起こされているような動き。

そのまま立ち上がる。

足元はおぼつかない。

どこか泥酔した人間の動きにも似ていた。

緩慢で、不安定で、目眩にも似た動きを見せる。

仰け反らせていた上体を起こし、葵がこちらを向いた瞬間。

「ひっ!」

美晴が鋭く息を呑んだ。

……今にも零れ落ちそうな白目を剥いた眼球、だらしなく垂れ下がった舌、女性とは思えない、喉の奥から絞り出すような唸り声。

完全に、正常な人間の顔ではなかった。

否。

『生きている人間の顔ではなかった』