気がつくと、葵は屋敷の外へと出て行ってしまっていた。

「……」

屋敷の灯りが少し遠くに見える場所で、ようやく足を止め、木の幹にもたれかかって嗚咽する。

悔しかった。

好きだった恭平が、美晴と結ばれてしまった事。

他の誰が恭平と結ばれても、こんなに悔しい思いはしない。

もとより自分が恭平と想いを遂げられるとは思っていなかったのだ。

自信がなかった事もある。

しかし。

美人で、聡明で、家柄もいい美晴。

生まれながらに何もかも恵まれていた美晴。

何の努力もせずに今の立場にいた美晴。

そんな彼女に、大好きだった恭平が奪われた事が悔しい。