私の恋が生まれた…
いや、ずっと隠れていた恋心に気づいた瞬間は
こんな間抜けな瞬間だった。
急かされる様に引っ張ってこられた飛行機の中
東京へのフライトの1時間
私はずっと泣きっぱなしだった。
やっと涙が引いたと思ったら、彼の顔を思い出して、また泣いて。
やっと泣き止んだと思ったら、また泣いての繰り返し。
お母さんは何かを察したのか
「大丈夫。
飛行機を降りたら、智くんに電話しなさい。
お母さん、お土産を選びながらアンタの電話が終わるの待ってるから。」
そう言って
私の頭を優しく撫でた。
恋ってもっと刺激的で
情熱的で、攻撃的なもの
だから誰かに恋に堕ちたら
すぐに気づくものだと思ってた。
でも……
それって恋じゃなく
ただの憧れだったのかもしれない。
だって、知らなかった
こんなに穏やかで
優しくて
陽だまりのような気持ちが“恋”だったなんて、オトナ達は誰も教えてはくれなかったんだもの。



