遅すぎた,I Love You【短編】



優しくて、知的なこの瞳が好き


おっとりしてるクセに
時々酷く大胆で行動派な彼が好き


知らないものを“知らない”と素直に言える、彼が好き――……





なんのことはない
私の“好き”は最初から友達としての“好き”じゃなかった。





彼があまりに近すぎて
そばにいてくれるのが当たり前すぎて
気づくのがこんなに遅くなってしまった。




わたしは…
智くんが好きだったんだ。




彼と一緒にいて楽しいと思うのも
離れることが寂しいと思うのも
全部全部、彼が好きだったから。



トモダチじゃなく
男の子として彼が好きだったから。




だからこんなにも
胸が張り裂けるほど寂しくて



涙が止まらなくなるほど、
切なくなるんだ……。





「じゃあ…
名残は尽きないけど、行きましょう。
飛行機に乗り遅れるわ。」




お母さんは急かすように
私をゲートへ引っ張って行く。




そして友達達は


「悠希、元気でね。」


と笑顔で私を送ってくれる。





だけど……
智くんだけは、あの何も映さない、空虚な瞳で私をずっと見つめていた。