何も感じていないような
傷ついているような
何も映していない、空虚な瞳
いつも優しさと知性を兼ね備えた
彼の瞳とは180度違う、その瞳
その瞳を見ているだけで
胸が締め付けられて
苦しくなって
泣きたくなって
切なくなるのは、どうしてだろう……。
もっと彼を見つめていたい
彼の表情をを忘れてしまわないように、ずっとずっと。
実際にすれば数十秒
でも私達にとってみたら何十分にも近い、永遠の瞬間
見つめあうごとに蘇る
彼との思い出
彼と初めて出会った、中学校
よく行ったあの海岸でのナイショ話
そして…
この地を離れると決めたあの日
彼と一緒に見た、あの綺麗な夕日
『離れてても、会えなくても、僕たちは親友、そうでしょう??』
あの赤い空間の中で
淋しさをたたえた瞳を持ちながら
彼は静かにそう言った。
自信がなくて弱虫だった
私の背中をしっかりと押すように。
「…悠希…??」
お母さんに、そう言われて
私は自分が泣いているのだと、初めてわかった。
「…え??」
「どうしたの?みんなと離れるのが淋しくなっちゃった??」
お母さんは呆れたように、クスリと笑う。
でも……
私はその涙の意味を考えて
やっと、やっと1つの答えにたどり着いた。
――あぁ、なんだ……
私、智くんのことが好きだったんだ。
胸の奥でずっとずっと。



