遅すぎた,I Love You【短編】



3歳から習っていたピアノ

遊び道具のようにいつも私の隣にあったピアノ


大好きだから、ピアノを弾ける進路に進めることは嬉しいけれど…そうすると彼と遠く離れてしまう。





「…どうしよう……。」




夕日の沈む海岸線を見ながら、彼に相談すると



「東京…行くべきだよ。」


少し考え込んだ後、彼は静かにこう呟いた。





「智くんは…淋しくないの??」




なんだか突き放されたような気がして、そう訊ねると




「淋しいに決まってるでしょ。
でも…僕も悠希ちゃんのピアノが好きだから、先生の言いたいことはわかる。」



そう言って
彼はクスッと笑うと、私の頭をヨシヨシと撫でる。






「だーいじょうぶ。
僕たちは離れてても、会えなくてもずっとトモダチだよ。」


「ほんとに?」


「うん。
離れてても電話もできるし、メールも出来る。
それに、友情に距離は関係ない。離れてても、会えなくても、僕たちは親友、そうでしょう??」





夏も終わりの
爽やかな風の吹き抜ける、白い海岸



あの日見た夕焼けは
今でも忘れることが出来ない




夕焼けのせいで赤く染まる空に
赤く染まる海



そして次第に
紺色に
深い藍色に変わる、海




大好きな親友に
サヨナラを決めた、あの夏の日を
私は今でも忘れることが出来ない。