絶対にみちゃダメ!

 この雅の姿、忘れられないかも。

 強烈な逃亡劇も。

 お世辞抜きでカッコイイ。

 本人の前では言わないけど。


 月明かりの下、ちゃんと男の子の格好をした姿を見たとき、心臓が止まりそうになったなんて絶対に教えてあげない。




 雅の金髪の裾を引っ張ってみる。

 そこでふと思い出してずっと不思議に思っていたことを聞いてみることにした。

「ねえ、雅。なんでわざわざ着替えてきたの?髪も戻したの?」

 雅はいつもわざわざ髪を茶色に染めてるんだ。

 瞳もコンタクトだし。

 あの特殊メイクみたいな女装からわざわざ着替えたなんて変だ。

 じーさまのまえで体がこわばっていたし、あたしの『ばれたら追放』という反撃にもひるんだから、きっと雅は男だってばれたくないんだと思う。

 それなのに、あえて男の子に戻るなんて手間のかかることをしてリスクを追うなんて馬鹿馬鹿しい。



「……虎が小町を婚約者したって会場中で騒いでるから、さらいたくなったんだ」

 ぽつんと雅の声が前から聞こえてきた。

 顔も見えないし口調も淡々としているから何を考えているかは良く分からない。

「小町はすぐ怒るから、アレからよく考えたんだ。俺……」

 どんな表情で言ってるのかも分からない。

 雅の声は真剣で、あたしは口を挟むことが出来なかった。