絶対にみちゃダメ!

 あたしが覚悟をきめてハイヒールを床に落とそうと足を動かした途端、

「なんの騒ぎじゃ」

 年齢を重ね、しわがれた声が聞こえた。



 で・たー!


 聞き忘れようの無い、東雲のじーさまの声。

 あたしを抱き上げる雅の体が一瞬こわばった。


 このじーさま、只者じゃないから。

 もしかして雅がご馳走に走っていったのは、じーさまと顔を合わせたくなかったからかもしれない。

 多分、女装していたら雅は正体を見破られる。

 このじーさまに嘘は通用しそうも無かった。


 まあ、人の胸触ったし単なる女好きなのかもしれないけど……。

 ニセモノの胸を触られたら、ばれるのは間違いないだろう。

 今は男の子の格好をしているけど、学院に通っている以上、見られたらまずいことには変わりないと思う。





 雅は分かっていたようで、勢い良く身を翻した。

 でも、向かったのはドアの方じゃなくて、窓の方だった。

 窓は閉まっている。

 今にも突進しそうな勢いで雅はあたしを抱えたまま窓に突っ込んだ。

「小町、目をつぶって」

 ガシャン!と派手な音がして、ガラスが飛び散る。

 びっくりして振り返ると、窓辺に飾ってあったガラス細工が飛び散っていた。




 高そうなのに!

 あれ一個でうちの何か月分の食費だろうか!?

 いや、何年分かかも。



 あたしは場違いにそんなことを考えていた。