絶対にみちゃダメ!

 考えてみたら、虎は学校でもお家でも……常に誰かに監視されているようなものなのかもしれない。

 こうやって素性を隠して人ごみにまぎれて、気を遣わず楽しんだりしたいのかも。

 そんなの、聞いてみないとわからないけどね。




 確かに、曲に合わせて身体をゆすってるだけで大分気分が違ってくる気がする。

 身体を動かすのはもともと好きだし。

 結構楽しい気分になってきた。




 しばらくして、虎が耳元に囁いてきた。

「俺、小町と結婚するの、今から楽しみなんだ!今までと違う毎日が送れる気がする」

 っていうか、やっぱり結婚することになってるんだ……。


 どこから突っ込んでいいかわからない。

 でも、 なんとなく虎の声がしんみり聞こえたから、何も言えなかった。

 それに、あたしは拒否権が無いから……。



「こういうのって権力を振りかざすみたいでダメかな……でも、そういう力とか使っても、小町がいい」

「何言ってるの、恥ずかしいよ」

 さすがに雰囲気がまずくなってきてあたしはごまかして笑った。

「あたしたち、知り合ったばっかりじゃん。あたし、虎が思ってるような女の子じゃないよ」

 ただ最初に一発、鉄拳を食らわしただけ。

 虎は多分そんなことされたこと無いから、珍しかっただけだと思う。

「虎には伊鈴みたいな女の子の方が合うよ」

 お育ちもさ。

 あたしみたいな貧乏な平凡な女の子じゃなくて。