絶対にみちゃダメ!

 この男『東雲虎之助』は……その苗字があらわす通り、この東雲学院の理事長の孫だったんだ。

 この学校では絶大な権力をもつわけ。

 あの『東雲虎之助』……まさか、こんな風に、人に殴られて惚れたとか抜かす変態だったなんて。

 名前からして、もうちょっと硬派なタイプかと思っていた。

 コレじゃ軟派を大きく通り越して、フニャフニャ系だよね。





 ニコニコ顔というよりデレデレ顔の虎が、馴れ馴れしくべたべた触ってくる。

「古臭いよなあ?虎之助なんて。な?小町」

 答えづらい質問だってば。

「え、男らしくてカッコいいんじゃない?勇ましそう……かな?」

 あたしはかなり苦し紛れに乾いた笑いを浮かべながら、思ってもいない嘘を吐き出した。

 名は体をあらわすとかいうけど、こいつの場合は全然当てはまっていない。

「そっかあ?小町が言うならそうかもしれない。虎之助も悪くないなあ」

 だ、だから抱きつかないでって!

 どこまでフニャってるのよ、アンタは。

 あたしは感触を味あわないですむように、必死に身を固めた。



「なあ、小町。虎って呼んで?」

 すっごく期待に満ちたまなざしであたしを見つめる虎。

「……虎」

「もう一回」

「虎?」

 何度も何度も……コイツ。

 あたしのコメカミにピシっと青筋が立った。