絶対にみちゃダメ!

 そんな感じの事が起きたのが10分少々前。

 お兄ちゃん、小町は初日からやらかしてしまいました。





 そして、今現在。

 隣にはニコニコ顔の黒髪の男。

 あたしが殴ったこの超失礼男は、とんでもないヤツだったんだ。

 まちがっても殴ったりしたらいけなかった……。



「俺のこと、虎(トラ)って呼んでくれ?小町」

 グリグリとあたしの髪の毛を撫でながら、機嫌よさそうに覗き込んでくる黒髪の男。

 整った顔の頬に、くっきりとした赤い手形がついている。

「何言ってるのよ、虎之助(とらのすけ)でしょ、アンタ」

 雅はあたしを挟んで迷惑そうに虎をみつめ、呆れたような口調で言った。

「うっせ、それを言うなよ、雅」

 虎はちょっと不服そうだ。



 この男の名前は『東雲虎之助(しののめとらのすけ)』なんて仰々しい。

 あたしは、名前だけは知っていた。

 名前だけは……ね。

「虎之助は虎之助でしょ!」

「古臭くてかっこわるいだろー。虎でいいの」

 右から左から、繰り返しやかましい声が聞こえる。

 あたしを挟んでケンカなんかして勘弁してよ。

 でも、殴った手前これ以上怒ったりできないし、とにかく相手が悪い。