絶対にみちゃダメ!

 あわわ、勘弁してよ。

 あたしはコイツとはなんともないんだから!

 そんなに好きならノシつけてあげるから!

 なんなら、女装好きな変態フェロモン王子、雅もオマケにつけてあげる。

 ただいま、出血大サービス!





 なんて冗談を考えているうちに、虎の足がとまった。

 あたしは勢い余って広い背中に突っ込んだ。


「じーさま。連れて来たぜ!」

 声が聞こえて、ぐるんと突然体が回る。

 転ばないようにハイヒールのかかとを鳴らしながら、バタバタと必死にバランスをとったときには、あたしは虎の前に押しやられていた。



 目の前に人だかりが出来ていて、みんなの視線がこちらをいっせいに向いた。

 突然の事に、あたしの背中に冷や汗が伝って、時間が止まったように動けなかった。


 虎の明るい声が背中から聞こえる。

「小町っていうんだ。め~っちゃ可愛いだろ」

 まるで船に乗った漁師さんが、大物を釣り上げて自慢でもする時みたいな雰囲気。

 人に囲まれていた、椅子に座った小柄な老人が、虎の声に顔をこちらに向けた。



 その頭のてっぺんは禿げ上がってつるつる。

 耳の上からふさふさと長い真っ白な髪が生えている。

 眉毛も真っ白でやたら長い。

 豊かなあごひげも真っ白。

 漫画かなんかに出てくる仙人さまかなんかみたいだ。