絶対にみちゃダメ!

 間違っても、平手打ちとかみぞおちパンチとかしたらいけないんだってわかった。

 そんなことをしたらつまみ出されちゃう。

 この会場から出れるのはせいせいするけど、学院から追放……なんてなったら……。


 ダメダメ。それだけはマジで勘弁だわ。

 お兄ちゃん、小町は頑張ります。




 虎が突然勢いよくあたしの手をつかんだ。

「いっくぞ~!」

 陽気に虎が雄たけびを上げる。



 突然体が引っ張られた。

「ちょ、ちょっと、何?」

「じーさまの周りの人ごみを突破するんだよ。これが一番!どけどけ、虎様のお通りだーっ!」

 とんでもない事をいいながら、ずんずんと虎は大股で歩く。

 外見はかっこよく変身していても、中身はやっぱり虎でしかなかった。



 あたしは引きずられるように連れて行かれるしかなかった。

 振りほどこうにも、がっちり手首をつかまれているんだ。

 まるで映画のモーゼの十戒に出てくる海みたいに、人ごみがささーっと割れていく。




 周りの人ののまなざしがナイフのように突き刺さってくる。

 ヒソヒソ声まで聞こえてくる始末だった。

 もちろんあたしにとって、耳にいい話題の訳がない。