絶対にみちゃダメ!

 あたしはみんなの羨望のまなざしを一挙に受けた。

 今のあたしは王子様に手を引かれる姫みたいなものなんだろう。

 あ、虎はキングだから王様か。



 どちらにしたって、庶民には手が届かない存在だね。

 ロングタキシードに包まれた幅の広い肩を見ていると、つくづくそう感じた。

 こんな風に手を引いてくれたり、教室で隣の席でウザイぐらいに話しかけてきたりするけど、本当の虎は遠くの世界の人なんんだ。



 こういう場面を目の当たりにして、初めて納得した。

 この誕生日パーティが全てを物語っている。

 虎があんまり人懐こくて気さくだから、そんなこと忘れていた。




「ほら、よく冷えていて美味しいよ」

 虎が黒いベストに蝶ネクタイの人から、グラスを受け取る。

 綺麗なグラデーションのかかったオレンジ色の液体が入っている。

 足つきのカクテルグラスみたいな感じだ。

「ノンアルコールのカクテル。名前はなんだっけ、忘れた」

 ニコと虎は太陽みたいな笑顔をあたしに向ける。

 このカクテルのオレンジは、虎みたいだ。



 一口舐めると、フルーティで甘い感じ。

 これならイケそう。



 あたしは喉が渇いていたから一気に飲み干した。