絶対にみちゃダメ!

 触んないでよ!

 と思ったけど、まさか初対面からそんなことを言うわけにもいかず、やんわりと振り払った。

「ちょっと、女の子の髪に気軽に触るのはよしなさいよ」

 雅がたしなめるように言ってくれる。

「いいじゃん、だってコイツ、特待生だろ?じゃ、俺の好きにしていいんじゃん」

 えらそうな口調に、カチンときた。

「へえ、肌も白くて綺麗なのな」

 男は身を乗り出してあたしの顔を撫でてきた。

 ざわり、と背中を嫌な電流が駆け上がった。



「触んないでよ!」

 次の瞬間あたしの強烈な平手が、男の頬にクリーンヒットした。

 いっけない、つい我慢できなくて。

 雅が『やっちゃったよ……』という様子で、片手で顔を覆った。



「おまえ……」

 男が頬を押さえて、ゆらりと体勢を戻す。



「カッコいいヤツだな!宮本小町、気に入った!今日から俺の彼女になれー!」


 突然そう雄たけびを上げたかと思うと、抱きついてきた。

 ひゃー。勘弁してよ。

「ちょ、ちょ、ちょっと離してよ!もう一発殴られたいの?」

 ふつふつと怒りが湧き起こってくる。

 叩かれて気に入るなんてコイツ、変な趣味でもあるんじゃないの?

「照れるなよー。可愛い!小町ー!」

 ギュギュギュと、締め上げられるように腕に力がこもった。

 初対面の男にここまでされるとは。

「いい加減にしてよ!」

 あたしの二発目の怒りの鉄拳が、男のみぞおちに見事にヒットした。