雅は涼しい顔をしてあたしの教科書をもってくれて歩いてくれる。

 それはちょっとしたエスコートをしてくれているみたいに見えた。

 そういえば、雅もいい所のお嬢様(お坊ちゃま?)のはずだった。

 そういう教育みたいなものは一通り受けているのかもしれない。

 でも、頭のねじが外れているみたいだけど。

 こうしてみれば普通の美少年なんだけどね。





 教室に着くと、まっ先に虎があたしに気づいてやってきた。

 その姿はトラというより犬っころみたいだ。

「こーまち~!おはよー。今日も愛してるよ!」

 コイツにはキングとしての威厳はないらしい。




 というか、ナチュラルなんだよね。虎って。

 東雲一族だとか、特待生だとか、キングだとか、そういうしがらみがなければいい友達になれたかもしれない。

 あくまで、『お友達』だけどね。




「今度の週末さ、俺の誕生日パーティやるから、屋敷に来て欲しいんだ!」

 虎は人懐っこい笑顔を浮かべながら、あたしの手をつかんでブンブン振り回した。

「誕生日パーティ?」

 あたしは折り紙でワッカを作って、フライドチキン食べて、ケーキを囲む小学生みたいな誕生会を思い浮かべた。

 17歳にもなってそんな誕生日会をするなんて聞いたことが無い。

 虎ならやりかねないけど……。

 ってか、似合いそうだし。